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その少女は 唐突に帰ってきた。 ![]() 長らく旅に出ていた家族だ。 私の顔を見ると、ニコッと笑い「ただいま」と言ったので 私も、戸惑いながらも「お帰り」と言った。 旅立ちの時ほどの感慨は、その時には湧かなかった。 ふと、その出で立ちに不審に思った。 「そのコート、どうしたの? それに、出かけるときにかぶっていた帽子はどこに行っちゃったの?」 大切にするね、と帽子をかぶり くるくると踊っていた姿が印象的だったのだ。 少女は、はっ、と自分のコートを見つめ、 そして、噛みしめるように言った。 「…みんなに優しくしてもらったの…。」 ![]() コートの中には これも見たことがない時代遅れの服を着ていた。 私はこの子の家族だから、 体のどこかに辛いところがないか、 心に深い傷を負うことはなかったか、 顔を見ればわかる。 充実した旅であったことは確かだ。 お茶を飲みながら、 懐かしい家に愛おしむような視線を投げ、 いま留守にしている家族の消息について矢のように質問をなげ、 はしゃぎ、 そして急に押し黙った。 ![]() 「…どうしたの?」 静寂を荒立てないようになるべく静かに、そう尋ねてみた。 少女は私の顔を見ると すべての感情を包み隠すようにまたニコッと笑った。 ![]() 「どうして人が旅をするのか、 わかったような気がするの。」 |